育児・介護休業法改正~令和4年以降の施行対応について~
Contents
1 はじめに
妊娠・出産・育児に関する労働法の定めとしては、労働基準法・男女雇用機会均等法・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法(育児介護休業法)との複数の法律による定めがあります。
このうち、特に育児分野について育児介護休業法が令和3年6月に改正され、令和4年1月以降に次々と施行が開始されますので、本稿では育児介護休業法令和3年6月改正により対応が必要となる事項について解説いたします。
2 産後パパ育休の創設(令和4年10月1日施行)
産後パパ育休(出生時育児休業)とは、今回の改正で新しく創設された制度で、子の出生後8週間以内に4週間の範囲内で取得可能であり、かつ最初に申し出ることにより(4週間の範囲内で)2回に分割して取得することが可能です。
女性の産後休業中の時期にあたることから「産後パパ育休」と言われます。
産後パパ育休の申し出は休業の2週間前までと定められていますが、後記5にて解説する育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置等を行うなど法を上回る取組を労使協定で定める場合は、申出期限を1ヶ月前とすることができます。
なお、労働者が産後パパ育休中に就業することを希望する場合は、あらかじめ労使協定を締結している場合に限り、産後パパ育休の開始予定日の前日までに就業可能日及び当該可能日における就業可能な時間帯を申し出ることによって、合意により可能となります。但し、事業主から産後パパ育休中の就労を一方的に求めるような取扱いにならないように注意しなければなりません。
また、産後パパ育休についても、通常の育児休業と同様に、受給資格を満たしていれば雇用保険から出生時育児休業給付金が支給され、要件を満たしていれば社会保険料も免除となります。
有期雇用労働者については、この出生から起算して8週間を経過する日の翌日から6月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない場合には対象となります。引続き雇用されている期間が1年に満たない場合でも、対象となり得ますので注意が必要です。
施行日以降に産後パパ育休の取得申し出があった場合、会社としては取得させる義務がありますので、施行日前に就業規則やその他社内のルールを整備する必要があります。なお、この出生後8週間以内に育児休業を取得し、かつ終了した場合には特別な事情が無い場合も育児休業が再取得可能とする「パパ休暇」の制度は、産後パパ育休の施行のタイミングで廃止となりますので、この点も就業規則の変更が必要です。
3 育児休暇の分割取得(令和4年10月1日施行)
現行の育児休暇制度では、法で定められた特別な事情が無い限り分割して取得することはできないとされていましたが、令和3年改正により、分割して2回まで取得することが可能とされました。
また、保育園に入園できなかった場合などに特別に認められていた1歳以降の育児休暇の延長についても、これまでは育休開始日は、1歳もしくは1歳半の時点に限定されていましたが、配偶者の休業の終了予定日の翌日以前の日を育児休業開始予定日とすることが可能となり、育休開始日の柔軟化が図られました。
4 妊娠出産等の申し出をした労働者に対する個別の周知・意思確認の措置(令和4年4月1日施行)
本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度に関する以下の事項について周知し、休業の取得以降の確認を個別に行わなければなりません。妊娠・出産の申し出が出産予定日の1ヶ月半以上前に行われた場合は、出産予定日の1ヶ月前までに行う必要があり、出産予定日の1ヶ月前までに申し出が行われた場合は2週間以内、出産予定日の1ヶ月前から2週間前の間に申し出が行われた場合は1週間以内などできるだけ早い時期に行うことが必要です。
個別の周知及び意向確認の方法は、面談・書面交付・FAX・電子メールのいずれかの方法によります。但し、FAXと電子メールについては労働者がその方法を希望した場合に限られます。なお、面談はオンライン面談でも可能です。
【周知事項】
・育児休業、産後パパ育休に関する制度
・育児休業、産後パパ育休の申し出先
・育児休業給付に関すること
・労働者が育児休業、産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取扱い
5 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(令和4年4月1日施行)
事業主は、育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。なお、これらの措置を講じるにあたっては可能な限り複数の措置を行うことが望ましいとされています。
①育児休業、産後パパ育休に関する研修の実施
研修は全労働者を対象とすることが望ましいですが少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態にすることが必要とされています。
②育児休業、産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
窓口を設置したうえで、当該窓口の存在を周知し、かつ実質的な対応が可能な状態にしておく必要があります。
③自社の労働者の育児休業、産後パパ育休取得事例の収集、提供
自社の事例収集のうえ、当該事例の掲載された書類の配布やイントラネットへの掲載により労働者が閲覧できることが必要です。
④自社の労働者へ育児休業、産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針周知
方針について、事業所内やイントラネットへの掲示が必要です。
6 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4月1日施行)
これまで有期雇用労働者の育児休業の取得については、①引き続き雇用された期間が1年以上②1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないという2つの要件を満たさなければ対象とされていました。
令和3年6月の改正により、新制度である産後パパ育休も含め①引き続き雇用された期間が1年以上との要件が撤廃されます。従って入社から期間の浅い有期雇用労働者も育児休業取得の対象者となります。
当該要件については、就業規則に記載されていることが多くありますので、これらの規定について削除する必要があります。
7 育児休業の取得状況の公表義務付け(令和5年4月1日施行)
常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。公表対象は、①育児休業の取得割合と②育児休業と育児目的休暇(目的の中に育児を目的とするものであることが明らかにされている休暇制度で、育児休業等及び子の看護休暇は除く。)の取得割合で、インターネットの利用その他適切な方法で一般の人が閲覧できるようにしなければなりません。
なお、育児休業を分割して2回取得した場合や育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合でも、同一の子について取得した場合は一人としてカウントする必要があります。
8 グロース法律事務所の労務サービス
グロース法律事務所では、労働事件における企業側専門の法律事務所として令和3年6月の育児介護法の改正に基づく就業規則の変更や制度の構築についてご相談をお受けしております。
自社の就業規則や育児休業に関する制度の見直しでお悩みの際は、ご相談ください。
グロース法律事務所によくご相談をいただく内容
・就業規則は会社設立時に作成したが、その後全く変更も行っていないことから実情と合っておらず、見直したい。
・従業員を解雇したかったが、就業規則の規定が不十分で解雇は認められないとのことだったので見直したい。
・事業の拡大に応じて、就業規則を見直したい。
・労働法の改正に応じて就業規則を見直す必要があるのか知りたい。
就業規則分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用
〇就業規則の新規作成
33万円~
就業規則を新規作成(又は新規作成と同視できる大幅改定)をいたします。
周知方法や今後の改訂方法などについてもアドバイスを行います。
〇就業規則及び関係規定の新規作成
55万円~
就業規則に加え賃金規程を始めとした各種関係規定も新規作成いたします。
周知方法や今後の改訂方法などについてもアドバイスを行います。
〇就業規則及び関係規定の内容確認と解説
11万円~
現存の就業規則及び関係規定について、内容の解説と要修正事項の解説を行います(修正案は含みません。)
〇就業規則及び関係規定の内容確認と修正案
33万円~
現存の就業規則及び関係規定について、修正案を提示し、就業規則の周知や改訂の方法についてもアドバイスを行います。
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