労使協定の締結について
1 労使協定とは
労使協定とは、使用者と労働者団体との合意のことを指しますが、労働基準法上「事業場の労働者の過半数を組織する労働組合がある場合にはその労働組合、その労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する者との書面による」必要があります。
この労働組合が無い場合の過半数代表者の選定については、過半数代表者か管理監督者でないこと及び過半数代表者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法(話合い、持ち回り決議を含む)によって選出された者であることが求められ、この要件を満たしていない者との労使協定は無効となります。
従って、過半数代表者の選出過程を明らかにし、記録に残しておく必要があります。
また、労使協定は会社ごとではなく、事業場ごとに締結する必要があります。
労使協定は、労働法上の規制を使用者と労働者の合意により解除する効果があります。例えば、時間外労働は労働法上規制されていますが、使用者と労働者団体にて時間外労働があることについて協定を締結すれば(いわゆる36条協定)、時間外労働を命じることが可能になるという効果があります。
2 労使協定の種類
労使協定には、労基署への届出が必要なものと、不要なものに分けることができます。届出が必要な労使協定であるにもかかわらず届出を怠った場合は、行政指導にとどまらず、刑事罰が科されることもありますので、労使協定が必要な事項を把握すると共に、届出が必要な事項も把握し、もれなく届出を行う必要があります。
3 届出が必要な労使協定
協定締結だけではなく、労基署への届出が必要になる事項の主なものは以下のとおりです。
・労働者の貯蓄金の管理に関する労使協定(労基法18条)
使用者が労働者から財畜管理の委託を受け、実施する場合がこれにあたります。
・1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定(労基法32条の2)
1週間の労働時間が1ヶ月平均した際に40時間とすることで、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えるようにするために必要な協定です。ただし、就業規則にて定められている場合は届出は不要とされています。
・1年単位の変形労働時間制に関する労使協定(労基法32条の4)
1週間の労働時間が1年間平均した際に40時間とすることで、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えるようにするために必要な協定です。
・時間外労働、休日労働に関する労使協定(労基法36条)
労基法で定められた時間を超過する労働や休日出勤が発生するために必要な協定です。
・事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定(労基法38条の2)
事業場外で法定時間を超える残業が発生する場合に必要な協定です。
・専門業務型裁量労働制に関する労使協定(労基法38条の3)
該当業務において裁量労働制を導入する際に必要な協定です。
・フレックスタイム制に関する労使協定(労基法32条の3第4項)
フレックスタイム制の導入において、清算期間が1ヶ月超える場合に必要な協定です。
4 届出が不要な労使協定
協定の締結は必要ですが、労基署への届出が不要な事項の主なものは以下のとおりです。
・賃金から法定控除以外の控除を行う場合(労基法24条)
法定控除以外のものにつきに賃金から控除する場合に必要な協定です。
・フレックスタイム制に関する労使協定(労基法32条の3)
清算期間が1ヶ月を超えないフレックスタイム制を導入する場合は協定締結は必要ですが、届出は不要です。
・休憩の一斉付与の例外(労基法34条2項)
労働者が一斉に休憩するのではなく、交替で休憩を取る場合に必要な協定です。
・年次有給休暇の時間単位での付与(労基法39条4項)
年次有給休暇を1時間単位に区切って消化する場合に必要な協定です。
・年次有給休暇の計画的付与(労基法39条6項)
年次有給休暇について、計画的に休暇取得日を振り分けるために必要な協定です。
・年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合(労基法39条7項但し書き)
・育児休業、看護休暇、介護休業、介護休暇等の対象除外者の範囲(育児介護休業法6条、12条、16条の8)
以上、労使協定は届出の必要性も含めて把握する必要があります。グロース法律事務所では、使用者側専門の法律事務所として、当該事業所における労使協定必要性の判断、締結手続きのフォローが可能ですので、自社の労使協定の締結について見直される場合は、一度お問い合わせください。
徳田 聖也
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